
ゲーミングPCを選ぼうとしたとき、店頭や通販サイトでズラリと並ぶスペック表に圧倒されてしまう方は少なくありません。「Core i7?RTX 4070?16GBで十分?32GB必要?」「この価格で妥協していいのか?」など、選び方で迷うポイントは多くあります。
この記事では、CPU・GPU・メモリというゲーミングPCにおいて最も重要な3要素を中心に、「何を重視すればいいか」「最新のおすすめ構成例」「初心者がつまずきやすいポイント」などをできる限り具体的に解説します。この記事を読めば、スペック表と格闘することなく、自信をもってゲーミングPCを選べるようになります。
1. ゲーミングPCにおける「CPU・GPU・メモリ」の役割と重要性
まずは、それぞれのパーツがゲーミングにおいてどのような役割を果たすかを理解しておきましょう。これを押さえておくと、「なぜこのスペックが必要か」が体感的に理解できるようになります。
パーツ | 主な役割 | ゲーム性能に与える影響 | ボトルネックになりやすい場面 |
---|---|---|---|
CPU(中央処理装置) | ゲーム内の論理処理、AI処理、物理演算、描画指示などを統括 | 高FPS・CPU依存処理で効果が出る | 大規模マルチプレイヤー、シミュレーション、物理演算多用の場面 |
GPU(グラフィックカード) | グラフィック描写・シェーダー処理・レイトレーシングなど | フレームレート・画質設定にほぼ直結 | 高解像度(1440p/4K)や高設定モード |
メモリ(RAM) | プログラム・データの一時記憶領域 | 読み書き速度、同時処理数に関与 | 多数の同時プロセス・テクスチャ読み込み速度低下時 |
簡単に言えば、GPUが「絵を描くエンジン」、CPUが「指令を出す司令室」、メモリが「作業テーブル」、といったイメージです。これらのバランスが崩れると、どれかがボトルネックになりやすくなります。
2. CPUの選び方 ― 型番・世代・コア/クロック・注意点
2-1 CPUメーカーとラインナップの特徴
現在、主流のCPUメーカーは Intel と AMD の2社です。
- Intel:Core i3 / i5 / i7 / i9 シリーズ
- 世代(第n世代)で性能が変動
- 一部のモデルには内蔵GPU(例:Core i7-14700F は “F” で内蔵GPUなし)
- AMD:Ryzen シリーズ(Ryzen 5 / Ryzen 7 / Ryzen 9)
- 番号により世代とグレードを判断(例:Ryzen 7 7800X3D)
- 一部モデルには内蔵GPU(APU)モデルもあり
例:型番「Ryzen 5 7600X」は 7000シリーズ、5番台モデルで、X は性能重視仕様という意味を示すことが多い。
2-2 世代・型番の読み方
- Intel:型番例 “Core i7-14700K”
- “14” → 第14世代
- “700” → グレード(性能クラス)
- K / F などのサフィックス(K=オーバークロック可能、F=内蔵GPUなし)
- AMD:型番例 “Ryzen 7 7800X3D”
- “7” → Ryzen 7
- “800” → 世代・性能目安
- “X / 3D” などサフィックス(3Dは 3D V-Cache 技術搭載、ゲーム向け特化寄り)
2-3 コア数・スレッド数・クロック(周波数)
- コア数 / スレッド数
多数コア/スレッドはマルチタスクやゲーム+配信同時実行時に有利 - ベースクロック / ターボブースト
高クロックほど単一スレッド性能で有利 - キャッシュ容量
特にゲーム処理で影響を与えることがある - 消費電力 / 発熱
高性能モデルはTDP(熱設計電力)が大きく、適切な冷却が必要
2-4 推奨 CPUクラス・目安
用途・目安 | Intel | AMD |
---|---|---|
エントリ〜標準ゲーム用途 | Core i5-14600 / i5-14700F | Ryzen 5 7600 / 7600X |
高設定・1440p ゲーム用 | Core i7-14700K / i7-14700F | Ryzen 7 7800X3D |
CPUボトルネックを避けたい高性能構成 | Core i9-14900K | Ryzen 9 7900X3D / 7950X3D |
なお、最新の CPU 比較表などは「PC Recommend」などで更新されている情報が参考になります。PCRecommend
2-5 注意点・落とし穴
- 古い世代の型番(例:Core i7-9700K 規格)が最新世代の下位モデルより性能が劣るケース
- F付きモデルは内蔵GPUなし → GPUは必須
- 互換ソケット/マザーボードの対応を確認(例:AM5 / LGA 1700 など)
3. GPU(グラフィックカード)の選び方 ― 世代・型番・VRAM・冷却・電源対応
GPU はゲーミングPCの中で最も重要なパーツであり、選び方を誤ると性能を十分に引き出せないことがあります。
3-1 GPUの種類・分類
GPU は大きく次のように分類できます。
- 内蔵GPU(CPUに統合)
軽量作業やライトなゲーム用途に限られる - ディスクリート(専用)GPU / グラフィックカード
高負荷ゲームに対応。NVIDIA / AMD が主流 - クラウド GPU(外部サーバーで GPU 処理を行う形態)
ゲーミングPC本体ではないが活用例あり
3-2 型番・世代の読み方
GPU も CPU 同様に、 世代 + 型番数字 + 補足記号 で読み解くことができます。
例:NVIDIA の “RTX 4070 Ti”
- “40” → Ada Lovelace 世代
- “70” → ミドル〜ハイレンジクラス
- “Ti / SUPER / Extra” などは性能強化モデル
AMD の例:“Radeon RX 7800 XT”
- “7000” → RDNA 3 世代
- “80 / XT” → 上位モデル
GPU の性能は世代が新しいほうが基本的に有利ですが、世代が異なる場合、上位世代下位モデルと下位世代の上位モデルで性能が逆転する場合もあります。
3-3 VRAM(ビデオメモリ)の重要性
- VRAM は GPU が描画を行うための専用メモリ
- 解像度やテクスチャの重さに応じて消費される
- 容量が少ないと高画質設定や高解像度設定ができない、フレームドロップが起こることもある
目安例:
解像度 / 画質設定 | 推奨 VRAM 容量 |
---|---|
フルHD(1080p)・中〜高設定 | 6〜8GB |
QHD(1440p)・高〜最高設定 | 10〜12GB |
4K・最高設定 | 16GB 以上推奨 |
VRAM は後から増設することができないため、将来性を考えるなら余裕を持たせたモデルを選んでおくと安心です。
3-4 冷却方式・サイズ・消費電力・スロット幅
- 冷却方式:吹き替えファン / 3連ファン / 水冷一体型(AIO)など
- サイズ(長さ / 幅 / 高さ):ケースの内部スペースに合致しているか確認
- 消費電力 / 電源容量:高性能 GPU は 300W〜500W 近く消費することも
- PCIe 形状 & レーン幅:PCIe x16 スロット、PCIe 4.0/5.0 対応など
3-5 ベンチマーク比較・レビュー参照
型番だけで性能を判断するのは限界があります。性能を正確に把握するには、ベンチマークスコア(3DMark/ゲーム実測 FPS)を比較するのが王道です。また、冷却性能や騒音、消費電力などもレビューで確認しておくと実用性がわかります。
3-6 実用的な GPU クラス例(2025年基準)
用途目安 | 推奨 GPU(NVIDIA) | 推奨 GPU(AMD) |
---|---|---|
フルHD・中設定 | RTX 4060 / 4060 Ti | RX 7600 / RX 7700 |
フルHD〜QHD・高設定 | RTX 4070 / 4070 Ti | RX 7800 / RX 7800 XT |
QHD・高〜最高設定 | RTX 4080 | RX 7900 XT / RX 7900 XTX |
4K・最高設定 | RTX 4090 / RTX 4090 Ti | RX 7900 XTX(※高負荷時に妥協も検討) |
4. メモリ(RAM)の選び方 ― 容量・速度・デュアルチャネル・将来性
4-1 容量の目安
- 16GB:現在のゲーミング用途の標準ライン。多くのゲームで十分対応
- 32GB:余裕があり、将来性も考慮した選択
- 8GB以下:動作するゲームもあるが、テクスチャ読み込みやロードで制約を感じる可能性あり
4-2 クロック速度とレイテンシ
- メモリ速度(例:DDR5-6000, DDR5-7200 など)が速いほど読み書き性能は向上する
- ただし、FPS・ゲーム描画では 容量優先 → 速度優先 の順で選ぶ方が現実的
- レイテンシ(遅延時間)が小さいモジュールはやや有利になる可能性もあるが、価格差とのトレードオフを確認
4-3 デュアルチャネル vs シングルチャネル
- デュアルチャネル構成(2枚組)にすることでメモリ帯域が広がり性能が向上
- 例えば、16GB を 8GB × 2 の構成にする方がシングル 16GB より無難
- 将来的に 32GB にするなら、16GB × 2 や 32GB × 1(将来もう1枚足す余地)といった構成も考慮
4-4 将来性・拡張性
- 将来的に用途が重くなれば 32GB が欲しくなる可能性
- スロット数(マザーボード上の空き DIMM スロット)を確認しておく
- DDR4 / DDR5 など、マザーボードの対応規格にも注意
5. その他注意すべき要素 ― 電源・ストレージ・冷却・ケース
上記3要素(CPU・GPU・メモリ)に加えて、次の要素も性能維持・安定性確保のために非常に重要です。
5-1 電源ユニット(PSU)
- 信頼性の高いブランドを選ぶ(Seasonic、Corsair、be quiet!、Antec etc.)
- 80 PLUS 認証(Gold / Platinum など)を持つものを推奨
- 容量は余裕をもって選ぶ(GPU・CPU の最大消費電力 + 将来拡張分を見込む)
- 例:RTX 4070 + Core i7 構成なら 650W〜750W あれば十分余裕あり
5-2 ストレージ
- **NVMe SSD(PCIe 4.0 / PCIe 5.0)**が主流。高速読み書きでロード時間を短縮
- ゲーミング用途なら 最低 1TB は欲しい(ゲームサイズが大きいため)
- 補助ストレージで SATA SSD や HDD も併用可能
5-3 冷却構成
- CPU クーラー(空冷/水冷一体型)を選定
- ケースのエアフロー設計(吸気ファン / 排気ファンのバランス)
- GPU 冷却性能(ファン数・ヒートパイプ構成・ファン制御)
- PC を静かに保ちたいならファン回転制御や抑制モデルを検討
5-4 ケース・拡張性
- GPU の長さ・幅・高さを収められる内部スペース
- 2.5インチ / 3.5インチドライブベイ、M.2 スロットなどの拡張性
- ケーブルマネジメントをしやすい構造
- 騒音対策の遮音設計・ファンの取り外しやすさ
6. 用途別おすすめ構成例(2025年版)
以下は、2025年時点で「コストパフォーマンス重視」「高性能」「4K志向」など用途別におすすめできる構成例です。
6-1 コスパ重視エントリー構成(約15~18万円前後)
パーツ | 推奨構成 |
---|---|
CPU | Intel Core i5-14600 / Ryzen 5 7600X |
GPU | NVIDIA RTX 4060 / AMD RX 7700 |
メモリ | DDR5 16GB(8GB × 2) |
ストレージ | NVMe SSD 1TB |
電源 | 650W 80 PLUS Gold |
CPUクーラー | 高耐久空冷モデル |
ケース | ミドルタワー、エアフロー重視タイプ |
この構成であれば、フルHDゲーム/高設定でも快適、QHD モードの軽め設定も狙えます。
6-2 高設定・1440p ゲーム用構成(約25~30万円前後)
パーツ | 推奨構成 |
---|---|
CPU | Intel Core i7-14700K / Ryzen 7 7800X3D |
GPU | NVIDIA RTX 4070 / RTX 4070 Ti / AMD RX 7800 XT |
メモリ | DDR5 32GB(16GB × 2 または 32GB × 1) |
ストレージ | NVMe SSD 1TB~2TB |
電源 | 750W〜850W Gold |
CPUクーラー | ハイエンド空冷/水冷一体型 |
ケース | ミドルタワー以上、拡張性重視 |
この構成であれば、QHD(1440p)高〜最高設定でも余裕を持ってプレイできます。
6-3 ハイエンド / 4K 向け構成(予算重視ではない方向け)
パーツ | 推奨構成 |
---|---|
CPU | Intel Core i9-14900K / Ryzen 9 7950X3D |
GPU | NVIDIA RTX 4090 / 4090 Ti |
メモリ | DDR5 32〜64GB |
ストレージ | NVMe SSD 2TB+予備ドライブ |
電源 | 1000W 80 PLUS Platinum など |
CPUクーラー | 高性能水冷(240mm / 360mm) |
ケース | フルタワー or 高冷却設計モデル |
この構成は、4K ゲーム・最高設定・レイトレーシング等の重い描写でも余裕あるパフォーマンスを期待できます。
7. BTOモデルの具体例紹介
以下は日本国内で入手可能な BTO(受注生産)ゲーミングPC モデルの一例です。初心者がそのまま購入できる選択肢として参考になるでしょう。
(価格・仕様は変動するため、購入時に必ず仕様を確認してください)

GALLERIA RM7R-R56 5700X

G TUNE DG-I5G60

FRZAZ890W/B
これらのモデルをベースに、「GPU を上位に」「ストレージを倍に」などのカスタマイズが可能な BTO 形式のものを選ぶのがおすすめです。
まとめ
本記事では、ゲーミングPCを選ぶ上で最も核となる CPU・GPU・メモリ の見方を中心に、加えて電源・ストレージ・冷却など周辺要素も含めた選び方を解説しました。
初心者が特につまずきやすい点のまとめ:
- GPU を軽視して CPU に偏った選び方をしてしまう
- VRAM 容量不足で高設定が選べない
- 電源ユニット/冷却の見落としによる性能低下や故障
- マザーボード・ケースとの互換性を確認しない
難しそうに見えても、結局こういうこと!

ゲーミングPCのパーツ構成は数字や型番が多くて難しく感じますが、実はポイントはとてもシンプルです。
つまり、こういうことです:
- GPU(グラフィックカード)でゲーム性能がほぼ決まる
→ どのゲームを快適に動かしたいかでGPUを選ぶ。 - CPUはGPUの性能を支える頭脳
→ GPUに合わせて“ミドル〜ハイ性能”を選べばOK。 - メモリは余裕をもって16GB〜32GB
→ 少なすぎると動作がカクつく。 - 電源・冷却・SSDは「安定して長持ちさせる土台」
→ ケチらず信頼性重視。
つまり――
「GPUを軸に、CPUとメモリをバランス良く」
この考えさえ覚えておけば、失敗することはほとんどありません。
ひとことで言うと
「GPU=ゲームの速さ」「CPU=処理の頭脳」「メモリ=作業の広さ」
この3つをバランス良く揃えれば、どんなゲームも快適に動きます。